グリースの役割

グリースの成分

グリースは、液体の潤滑油とその油を固める成分を混ぜ合わせて半固形状(ペースト状)にした潤滑剤です。

グリースに使われている潤滑油は「基油 (ベースオイル)」、その基油を固める成分は「増稠剤 (ぞうちょうざい)」と呼ばれています。

分類 成分例
基油

鉱油

脂肪酸エステル

ポリαオレフィン

シリコンオイル

フッ素系合成潤滑油

(パーフルオロポリエーテルなど)

増稠剤

脂肪酸石鹸(ステアリン酸Ca、Li、Alなど)

ウレア系化合物

ベントナイト

フッ素系樹脂

(ポリテトラフルオロエチレンなど)

更に、要求性能に応じて酸化防止剤や防錆剤、極圧添加剤などの添加剤が加えられています。

これらの基油・増稠剤・添加剤などを様々組み合わせて、グリースを使用する場所の環境(高温、低温、高湿、溶剤蒸気、真空、無塵など)や稼働条件(回転数、荷重、運転時間、連続運転、間欠運転、給脂頻度など)に応じて様々な種類のグリースが作られています。

 

グリースの用途

潤滑性を必要とする部品で、液体の潤滑油を使うと飛散・漏出する様な構造のものに使われています。 

使用例
ベアリング、ギア、チェーン
ワイヤー、コントロールケーブル
スライドレール、その他摺動部品

 

グリースと液体の潤滑油の違い

ベアリングを例にして、グリースの役割を簡単に説明致します(下図)。

ベアリングは使われ方に応じて、外輪を固定して内輪を回転させたり、内輪を固定して外輪を回転させたりします。下図①~③は、外輪を固定して内輪を回転させた状態をデフォルメして表現しています(実際には、鋼球を等間隔に並べる為に保持器(リテーナー)と呼ばれる部品が取り付けられています)。

 

【①潤滑油もグリースも使わない状態】

①潤滑油もグリースも使わない状態

ベアリングの鋼球や外輪・内輪のレールの表面はとても滑らかに仕上げられていますので、新品の状態では潤滑油が無くてもスムーズに回転します。しかしながら、実際には外輪-鋼球-内輪の間に荷重などの負荷が掛かる状態で使用されますので、回転を続けていると金属表面同士が接触する部分の摩擦が大きくなって発熱や摩耗、更には焼き付きなどを起こして回転しにくくなります。

 

【②液体の潤滑油を使用した場合】

②液体の潤滑油を使用した場合

液体の潤滑油は、完全に密閉されている様なベアリングに使用されることがあります。しかしながら、一般的なベアリングでは液状の潤滑油が飛び散ったり、ベアリングカバーやシールの隙間から漏出しやすく、潤滑性を維持することが困難です。やがて①の様に回転しにくくなります。

 

【③グリースを使用する場合】

③グリースを使用する場合

グリースはペースト状ですので、液体と違って付着力があります。したがって、ベアリング内に付着すると漏れにくくなります。付着したグリースは、ベアリングの回転によって引きずられ(せん断応力が加わり)、その引きずられた部分の粘性が低くなって回転面等の隙間に入り込みやすくなり、ベアリング内全体に塗り広げられて潤滑性を発揮します。

更に、グリースは基油を出し入れする性質があり、表面から染み出た基油も潤滑性に寄与しています。染み出た基油はベアリングの回転が止まると、再び増稠剤と混ざり合ってグリース状に戻ります(グリースの劣化が進むと元に戻りにくくなって基油の分離量が増え、ベアリングの隙間から少しずつ漏れることがあります)。

 

耐熱グリースについて

グリースは、使用環境や用途などに応じて様々な種類があり、それらの中から最適なものを選んで使用されています。例えば、常温では良好な潤滑性を発揮するグリースでも、100℃や150℃、更には200℃の様な高温になると、ペースト状から液状に変化してしまう性質を持つグリースがあります。その様なグリースを高温となる箇所で使用すると、グリースが漏出して潤滑性が維持できなくなります。その為、高温箇所には一般的に「耐熱グリース」と呼ばれるグリースが使われ、高温でも液状に変化しない性質を持つグリースなどが使われています。

当社では、耐熱グリースとして「スーパールーブ」を製造しており、主に高温炉や排煙設備の排風ファンやローラーコンベアのベアリング、ガイドレールなどに使われています。


ホーム